ダルメシアンが日本に少ない理由
2019年度のジャパンケネルクラブ(JKC)に登録された頭数では、日本国内で飼われているダルメシアンの頭数は384頭だったそうです。
参考サイト:ジャパンケンネルクラブ「2019年(1月〜12月)犬種別犬籍登録頭数」
JKCによると大型犬の登録頭数の順位は
1位:ラブラドールレトリバー
2位:ゴールデンレトリバー
3位:シベリアンハスキー
4位:スタンダードプードル
5位:バーニーズマウンテンドッグ
6位:ダルメシアン
このように、ダルメシアンは6位にランクインしていますが、1位のラブラドールレトリバーは4,774頭ですし、ダルメシアンより一つ上の順位のバーニーズマウンテンドッグは970頭の登録ですから、これから見てもダルメシアンはとても日本に少ないことがわかります。
なぜダルメシアンが日本に少ないのかという理由ですが、しつけも含めてダルメシアンは「飼いにくい」犬種であるため、日本での需要が少ないというのが大きな理由です。
飼いにくい犬種と言われるゆえんについてはこの後に詳しくご紹介しますが、初心者にお勧めできる犬種ではありませんし、飼うのに適した環境を整えるのも都会では難しいと言わざるを得ません。
ダルメシアンが日本に少ないのは、需要も少な目なせいもあり、ペットショップで一般的に売られることが稀になっていますし、ブリーダーの数自体全国で見ても少ないんですね。
ダルメシアンを迎えたい場合は、県をまたぐことを視野に入れてブリーダーさんを探し、出産する予定を聞いておくなどが必要になります。
そうして先に準備をしておかないと、子犬が産まれてもすぐに売り切れてしまうなど、ブリーダー経由で迎えることも困難になることが多いです。
もちろん、ダルメシアンが飼いにくいというのはダルメシアンの性格が悪いとかしつけができないというわけではありません!
どの犬種もそうですが、その犬種が作出された目的や体格・特徴などに応じて適した環境を整えることができなければ、犬はストレスをためてしまい心の病気になってしまったり体調を崩してしまいます。
それではどうしてダルメシアンが飼いにくいと言われているのかその理由について詳しく解説していきましょう。
ダルメシアンが飼いにくいと言われるのは?
ダルメシアンが飼いにくい理由についてご紹介していきますが、どれくらい飼いにくいのかというと…
飼いにくい犬種のランキングの第8位にランクインするくらい飼いにくいと言われている犬種です。
ちなみに、飼いにくい犬種ランキングの第3位がビーグル、第2位がジャーマンシェパード、第1位が秋田犬になっていました。
8位という順位は微妙とも思えますが、ダルメシアンは飼いにくい犬種にランクインしてしまうくらい、飼いにくさが周知されているということで、軽い気持ちで変えない犬種だと思ってもらって間違いはありません。
ディズニー映画の「101匹わんちゃん」で、大人から子供まで広く有名になったダルメシアン。
家庭犬として人気がありますが、体が大きいですし、力もあります。
愛玩犬や鑑賞犬のような気持ちで飼い始めると、かなり手こずる恐れがあります。
初心者さんには向いている犬種とは言えません。
ダルメシアンの性格についてはこの後に詳しくご紹介しますが、飼いにくいという面から性格を見た場合、訓練されるのは好きだけど頑固な面があるというちょっとしつけが難しい部分を持っています。
例えば、走るのは非常に得意ですが、細かい技術が必要になるドッグスポーツは苦手な個体が多いようです。
細かい技術を訓練されることを喜ぶというより、自分も気持ちよくできる訓練は喜んでできるというタイプと言えます。
頭は良いので、訓練されたことやしつけられたことはちゃんと覚えていきます。
難しい部分は、間違ったしつけをするとそれを覚えてしまい、頑固な面が邪魔をして間違った部分を矯正するのが大変なところです。
次にダルメシアンの特徴ともいえる体力面からみても、とてもパワフルで豊富な運動量が必要であるため、毎日十分な運動をさせなければいけないところも飼いにくさを感じられるところかもしれません。
運動不足にするとストレスによる問題行動に直結しますので、毎日朝晩2回それぞれ1時間以上の散歩が必要ですし、たまにドッグランで思い切り走らせてあげられる環境を整えなければいけません。
性格と運動面から飼いにくさを見てきましたが、もう一つ大きな問題として先天性の疾患が多い犬種としても知られています。
生まれつき聴覚が失われている・聴覚が弱いなどの先天性聴覚障害にかかりやすいですし、遺伝性の皮膚疾患であるワーデンブルグクライン症候群などの可能性もあります。
ご存じの通り、動物病院でかかる費用は高額になることも少なくありませんし、体が大きい分薬代も入院代も小型犬より高くなります。
保険に入ることはもちろん、金銭的に余裕が必要であることは言うまでもありません。
そして最後にダルメシアンは室内飼いが必須であるという点を忘れてはいけない点です。
ダルメシアンの被毛は、アンダーコート(下毛)が生えずオーバーコート(上毛)のみが生えるシングルコートという一層構造です。
犬は雪の中でも喜んではしゃいでいるイメージがあるかもしれませんが、ダルメシアンは被毛の生え方から見ても寒さに弱いです。
そしてもちろん高温多湿の夏の暑さにも弱いので、室内飼いをしなければいけませんから、大型犬が歩き回れる居住空間が必要になります。
さらに言えば、ダルメシアンが過ごす場所の床は滑りやすいと、四肢に負担がかかってしまいます。
滑ってけがをする心配もありますが、常に四肢に負担がかかっていると骨や関節に負荷をかけるので関節炎などの恐れも出てきますので、居住空間の床に滑り止めの工夫を施しておく必要もあります。
今までご紹介してきたダルメシアンが飼いにくいと言われる理由から考えますと、ダルメシアンを飼うのに向いている人というのは
- 犬に体力と時間とお金がかけられる人
- 訓練やしつけがしっかり出来る人
- 室内に広い飼育エリアを確保できる人
となりますので、そもそもダルメシアンを飼える環境を作れる人が少ないと言えるでしょう。
犬の小型中型大型・体重やサイズの基準は?飼育環境からの選び方
ダルメシアンの性格
ダルメシアンの飼いにくさのような面ばかりを見てきたので、ダルメシアンに対してネガティブなイメージを持たれてしまったかもしれませんが、ダルメシアン自体は飼い主さんの心をわしづかみにしてしまうような愛すべき性格の持ち主です。
ダルメシアンの性格は、活発で遊びが大好き!
疲れ知らずで聡明で、感覚が鋭いです。
見知らぬ人に対しては神経質になり警戒心が強くなるところもありますが、飼い主に対しての忠誠心は溢れています。
心を許した相手には深い愛情を示し、従順で甘えん坊な一面も持っています。
集団行動はできるので多頭飼いには向いていますし、警戒しないでよい相手には友好的で、仲良く遊ぶことができます。
好奇心の塊のような性格なので、興味のあることには徹底的に追求していくところがあるのと、遊び好きなのでじっとしていることは苦手。
先ほどご紹介したように、一度覚えたことをなかなか変えようとしない頑固さを持つので、しつけをし直さないで済むくらい、最初からしつけに関する知識が飼い主側に必要になります。
箇条書きにするとこんな感じでしょうか。
- 明るくて活発
- 聡明
- 飼い主に従順
- 好奇心旺盛
- 愛情深い
- 警戒心が強め
- 頑固
オスメスのダルメシアンの性格の違い
ダルメシアンの性格はオスとメスで大きな違いはありません。
ですが、傾向としてオスのほうが知らない犬に対して若干強気で向かっていくことがあるようです。
オスのほうが筋力があるのでメスよりも運動量が多く必要だったりして、体力を有り余らせてしまうと攻撃性が強くなることはあります。
メスのほうが穏やかで面倒見がよい性格の子が多く、慈愛に溢れています。
お気に入りのおもちゃを子犬に見立ててお世話を焼くなんてこともあるほどですが、その分飼い主さんや家族とのコミュニケーションが欠かせない性格であるともいえます。
ご紹介した性格というのは犬種として現れる性格ですのでごく一般的なことであり、必ずこの性格とは言えません。
子犬の時は時期であったりしつけの進ませ方によって、やんちゃ具合が変わりますし、成犬になった時の性格というのは育てられた時の環境で大きく変わるというのは覚えておいていただければと思います。
ダルメシアンの歴史や特徴
体高 | 54~61cm |
体重 | 24~32kg |
価格 | 10~20万円 |
原産国 | 旧ユーゴスラビア |
運動量 | 60分×2回 |
状況判断が良い⇒☆☆☆
社会性・協調性がある⇒☆☆☆
健康管理がしやすい⇒☆☆☆☆
訓練されるのが好き⇒☆☆☆☆
友好的⇒☆☆
大型犬としては体の大きさが小さめなので、中型犬として扱う場合もあるダルメシアン。
白地に黒い斑点模様がトレードマークのダルメシアンは、そのルーツについて全く不明なんだそうです。
古い時代からジプシー(放浪民)の一行と一緒に旅をしていたと考えられていて、その証拠に古代エジプトの壁画や、1360年代のイタリアの絵画にその姿が残されているそうです。
放浪民と共に様々な国を旅してきたため、多くの国で記録されているというのが起源がはっきりしない理由でもありますが、クロアチアのダルメシア地方で作られたと言われています。
引き締まった見事な体。
脚力も凄いですし、見た目の優美さからかつては馬車の伴奏犬として使われていたり、消防車の先導犬としても働いていました。
馬と走れるくらいですから、持久力も相当なものです。
作出された目的がはっきりしている犬種が多い中、ダルメシアンは起源がはっきりしないせいか幅広く仕事をこなせる器用さも持った犬種です。
荷物を守る役割を始め、狩猟犬や牧羊犬、軍用犬や番犬などどんな仕事を任されても役割をこなせるところに頭の良さや従順さを感じます。
体も大きいので吠える声は、大きく力強く響き渡ります。
ダルメシアンと言えばとても特徴的なのがスポットと呼ばれる斑点ですが、毛色としてはピュアホワイトの白地にブラックのスポットである「ホワイト×ブラック」とブラウンのスポットである「ホワイト×レバー」の2種類になっています。
シングルコートなのでダブルコートに比べれば抜け毛が少ないと言えますが、しっかり抜け毛はあるので毎日のブラッシングは欠かせません。
ダルメシアンのかかりやすい病気
ダルメシアンの健康に関しては、いくつか特徴的な病気があります。
尿路結石などの腎尿路系や皮膚疾患のほか、先ほどご紹介したように先天性の難聴もある可能性があります。
聴覚の面が少し弱いそうで、聴覚に異常がある場合は攻撃性が人間に向かうこともあり、特別なしつけが必要となります。
運動が大好きなダルメシアンですが、食後すぐには運動させずにおとなしくしている時間が必要です。
これは大型犬の特徴でもありますが、食べたものを長く胃にとどめておきますから、すぐに運動すると胃が動いてねじれる胃捻転を起こす可能性があります。
胃捻転は、一刻を争う早急な回復手術が必要になる怖い病気なので、常に気を付けてください。
ダルメシアンを飼うときの注意点
ダルメシアンについて詳しく見てきましたが、実際にダルメシアンを飼うとなった場合に注意していただきたい点をご紹介します。
ダルメシアンを飼うときの注意点は3つです。
- 社会化に力を入れる
- 恐怖を感じさせない
- お散歩上手にさせる
社会化に力を入れる
ダルメシアンは心を許した相手には友好的に振る舞えますが、知らない人には警戒心を強く抱いてしまう傾向があります。
これは犬種としての性格であって、子犬のころからたくさんの人や犬に会うことで社会性かはぐくまれます。
この社会性をはぐくむ社会化に力を入れておくことで、知らない人や犬に会ったときに抱く警戒心を弱めることが可能です。
強い警戒心は、恐怖心の裏返しでもあり、ふとしたことで相手への攻撃へとつながりますので、できるだけ社会科に力を入れて知らない人や犬も怖くないということを教えてあげることが望ましいです。
恐怖を感じさせない
ダルメシアンは見た目で、体全体に筋肉がついた凛々しい体型をしている大型犬ということもあり、イメージとして「強そう」と思ってしまうかもしれません。
強そうな相手にはどうしてもしつけをする段階で、私たち飼い主は厳しく接しがちです。
犬のしつけに主従関係を築くというのは必要なことですが、上下関係という意味ではなく信頼関係という意味の主従関係を重視していただきたいんですね。
「飼い主は犬になめられてはいけない」といった考え方の上下関係を意識してしつけをするという考えの方もいらっしゃいますが…厳しくしすぎて愛犬からの信頼ではなく恐怖の感情を抱かれる可能性が高くなってしまいます。
ダルメシアンの特徴のところでご紹介した通り、ダルメシアンはとても器用にいろいろな役割をこなしてくれることができる聡明な犬です。
飼い主さんの表情だったり、態度だったり、出すサインや発する言葉など私たちが思っているよりもダルメシアンは飼い主さんに注目し観察しています。
ですから厳しくしすぎたり叱りすぎたりしてしまうと、飼い主さんに対して敬愛の感情ではなく警戒心だったり不信感を抱きかねません。
見た目の凛々しさや強さに惑わされて厳しくしすぎることは逆効果になってしまうので注意してください。
お散歩上手にさせる
ダルメシアンは力もあるパワフル犬ですから子供だけの散歩はちょっと危険で、引きずられて事故の原因になることもあります。
大人であっても、力強い犬に引っ張られながら朝晩1時間以上のお散歩はきついと思います。
それに、飼い主さんを引っ張りながらのお散歩は、犬にとっても心地よいお散歩になっていないことが多々あるんですね。
本来外の世界の空気の匂いを嗅いだり、周りの景色を見たりしながら、警戒に歩くことで気持ちも体もよい刺激を与えることができるので運動として成立するのがお散歩です。
それが飼い主さんを引っ張りながらお散歩をしていると、飼い主さんを引っ張ることで頭がいっぱいになっていきます。
行きたいところに行けないというストレスを感じ、外の世界を楽しむこともできず、距離や時間をかけても心地よい運動にしてあげることができなくなってしまいます。
たくさん散歩の時間をとっているのに、落ち着きがなかったりイライラしやすい犬というのは、お散歩から気持ちの良い刺激を感じられずにストレスがたまってしまっている犬に多いです。
ここって、けっこう飼い主さんの盲点になっている部分で、うまくしつけができない大きな原因にもなっています。
リーダーウォークというのは、愛犬をほかの人からお利口さんに見られるために行うものではないんですが、リーダーウォークを軽視する飼い主さんは少なくありません。
リードを引っ張るお散歩をさせないことは、愛犬と飼い主さんの不慮の事故やけがを防ぐだけではなく、お散歩を運動として成り立たせ、ストレスを解消させることに繋がります。
ただでさえタフで力強いダルメシアンはお散歩上手にさせることはしっかりと意識していきましょう。