「もう~だめでしょ!こんなに椅子をボロボロに噛んで!」
愛犬がいたずらしたのを見つけて叱ると、体を丸めて申し訳なさそうにしょんぼりした顔をしている時がありますよね?
叱られている時や叱られた後に、犬がしょんぼりしているのは反省をしているように見えてしまいますが、本当に反省をしているのでしょうか?
今回は犬がしょんぼりしている時の気持ちについてご紹介していきたいと思います。
犬がしょんぼりしているときは反省をしてる?
飼い主が留守中に家の中のゴミ箱を散らかしたり、家具を噛んでボロボロにしてしまったり・・・
可愛い愛犬なんですが、困ったイタズラをしてしまうことがありますよね。
そんな困ったイタズラを見つけた時、あなたは叱ると思います。
すると、シュンとして上目使いにあなたを見上げ申し訳なさそうにしている姿を見て、「叱られたから、自分のしたことを反省してるのかな?」と思うかもしれません。
さてこんな時、犬も叱られたことについて反省をしたり落ち込んだりするのでしょうか?
これに関しては、犬の認知科学者アレクサンドラ・ホロウィッツ教授(Alexandra Horowitz)の2009年の研究で興味深い発言があります。
罪悪感の表情をした犬を見ると、私も犬が罪悪感を示していると思ってしまう。我々は、そう思ってしまうようになっているらしく、誰が悪いわけでもない
とホロウィッツ教授は語っています。
※ご興味がある方はこちらから原文をお読みいただけます。
研究で分かったことは、犬が「罪悪感」の表情をするのは、罪悪感のためではなく、飼い主の叱責への恐怖ということだそうです。
罪悪感というのは悪いことをしたという認識のことで、罪悪感を感じるには高度な脳の処理が必要になり、高度な処理をするのが「前頭連合野」という部分で、人間は脳全体の30%を占めているのに対して犬は7%なんだそうです。
脳の詳しい働きに関しては、日本学術会議のおもしろ情報館というホームページの方にわかりやすく乗っていましたのでそちらをご覧ください。
もちろん、人間の脳も犬の脳もまだまだ分からないことがたくさんあるので絶対ではありませんが、現段階の研究においては、犬の前頭葉の発達具合で考えると「反省をする」という処理ができないと考えられます。
犬がしょんぼり顔をしているのは、反省をしているというよりも「とまどっている・怖いと感じている」と考えたほうがより犬の気持ちに近いといえるわけです。
人間だったら、理由を説明して「◯◯だからこういうことをしちゃいけなかったんだ」ということを話せば、相手は反省してやらなくなるでしょう。
しかし、言語で話さない犬にはそれができませんし、脳の働きや大きさなどの面からみても犬は反省することはできないと考えられるということです。
私たち人間だって、言葉がわからない外国の人からいきなり怒られたら、理由がわからないので反省をするよりも、驚きますし怖いと感じると思います。
たぶん、相手の怒っている状態によったら、「何をされるかわからない」「とにかく相手の怒りを抑えたい」と思うのではないでしょうか?
反省をするというのはその理由が理解できて初めてできることなのです。
犬がしょんぼりしているときの気持ちと対応方法
さて、なんとなく犬が叱られた時にしょんぼり顔をするのは反省をしている訳ではなくて、戸惑ったり恐怖を感じているということがわかりましたが、叱られているとき以外にもしょんぼりしている時があると思います。
そんなとき、犬はどんな気持ちでいるのかをご紹介したいと思います。
- つまらない 遊びたい
- 寂しい・落ち込む
- 怖い(恐怖)
- 不安
- 環境の変化に慣れていない
- 体調が悪い
犬がしょんぼりしている時の対応として大切なのは、まず体調が悪いかどうかの判断です。
体調が悪い時に色々対応をしようとしても、逆効果になったり体調悪化の原因にしてしまいますから、体調が悪いのかどうかの見極めはしっかり行ってください。
自信がない時は、動物病院で診てもらっておくと、早期発見に繋がったり獣医師さんとの意思疎通を深められますのでおすすめです。
犬がしょんぼりしている原因が体調が悪いわけではではなければ、一番してほしい対応としては「遊ぶ時間を見直す」ということです。
お散歩は毎日連れて行っているけど、それとは別で遊ぶ時間をとっているという飼い主さんは案外少ないです。
遊ぶ時間をとっていると答えられた飼い主さんの中でも、犬が結局一人遊びをしているとか、なんとなく遊ばせている状況である場合が多い印象です。
遊ぶ時間は、犬が楽しいと思えるように飼い主さんも一生懸命遊んでいただくのが大切です。
- 遊ぶ時間は30分程度確保する
- スマホやテレビを見ない(「ながら遊び」をしない)
- 愛犬の好きな遊びをいくつか組み合わせる
犬との遊び方については下の記事をご参考にしてください。
犬とのおもちゃ遊び大切な5つのルール!唸る犬も喜ぶ遊び方の注意点
犬の雨の日の遊び方!遊び方がわからない人必見楽しめる室内遊び21選
お散歩の時間を増やすなどもよい対応ではありますが、お散歩中は外の世界に夢中になっていることが多いものです。
飼い主さんからの愛情をしっかりと感じられることは犬にとって大きな喜びになりますので、より愛犬を安心させ落ち着いた気持ちにさせる方法として遊ぶ時間に力を入れることはかなり効果的です。
叱られていることを理解しているときの犬のしぐさ
犬は叱られている理由は正しくわからないことはありますが、叱られていること自体は理解できます。
飼い主の様子がいつもと違うことに気付き、自分が叱られていることを理解することができますので、しょんぼりした顔になるんですね。
なぜ、私たち飼い主が叱られていることを理解しているときの犬のしぐさを知っておかなければいけないのかというと、
- 犬に間違った学習をさせない
- 無駄なストレスを与えない
上記のようにするためです。
基本的に、飼い主さんが怒りだすと犬は「早くこの時間が終わってほしい」という心理が働きます。
成犬になると、しょんぼりした態度をすると、飼い主さんの怒りがおさまるということを学習するからしょんぼりすることもあります。
これだと犬に「してはいけないこと」を教えることができていませんので、犬は正しい学習ができずに「しょんぼりした態度をとることが正解」という間違った学習をしてしまいます。
ほかにも、飼い主さんの顔色を見て「怒られそうだぞ!」と思うと、体を小さくして怒りがおさまるのを待つということをする場合もあります。
これも先ほどと同じ間違った学習ですし、いつも飼い主さんの顔色を見ていなければいけない生活にさせてしまう恐れがあります。
また、叱られたことを反省しているのではなく、とまどって困っている・怖がっているというのが犬の気持ちでしたよね?
反省する概念がない犬は、長く叱っても行動が改善されることは無く、ストレスだけがどんどん溜まっていきます。
ストレスが溜まってしまうと人間同様に体の病気にも心の病気にもなりますので、無駄なストレスを与えないためにも犬が叱られていることを理解している仕草を知る必要があります。
- あくびをする
- 体を掻く・なめる
- 他を向いて座る
- じっとかたまる
- 視線を合わせない
- 鼻をなめる
- 尻尾をゆっくり振る
- 突然地面の匂いを嗅ぐ
- ゆっくり歩きだす
- 体をブルブルさせる(身震い)
- 飼い主の手を舐める
上記に述べたしぐさはカーミングシグナルと言われる、自分や相手を落ち着かせようとする行動です。
今回はそれぞれのしぐさの意味などは割愛しますが、ちょっとしたしぐさですので怒っているときでも犬の行動を観察できる冷静さが必要であることを覚えておいていただければと思います。
犬に伝わる叱るタイミングと叱り方
外出から帰ってきた時、家の中がゴミだらけに・・・
疲れて帰ってきたところでゴミが散らかっていたらあなたはどうしますか?
「もう!ゴミ箱で遊んじゃダメって言ってるでしょ!!」
こんなふうに叱りつけていませんか?
こんな時、叱られている犬は飼い主が怒っていることだけはわかりますがなぜ怒っているか?叱られているのか?ということはまったくわかりません。
ただただ混乱しているだけなので飼い主としても叱っている意味が全くないんですね。
先ほどご紹介した日本学術会議のおもしろ情報館の中に、人間と他の動物(犬を含む)との大きな脳の違いという点で、「ワーキングメモリー」というのがありました。
犬ももちろん人間の言葉を記憶したり、思い出を記憶することはできますが、ワーキングメモリーが無いので、情報を組み立てたり解決策を見つけるという高度な脳の処理ができないのだそうです。
犬は記憶領域はありますが、ちょっと前のことを一時記憶しておくエリアという場所がないので、自分の行動を振り返ることができません。
ですから、犬に正しい行動を教えるために叱って良いタイミングは「現行犯のみ」になります。
大切なことなのでもう一度言います。
犬を叱っていい時は現行犯の時だけ!
飼い主から見たら、「イタズラ」と思うことを愛犬がやっているその瞬間に「だめ!」と言ってその行動を中断させます。
すると、「この行動はしちゃいけないんだな」ということを理解できるんです。
そして、ちゃんといけない行動を中断したら、今度はやめたことを褒めてあげましょう。
叱り方は犬にわかりやすく
犬に正しい行動を教えるために叱る場合、叱るタイミングはとても大切ですが、叱り方というのも非常に大切です。
犬にいたずらをされてイライラと怒ってしまうのも心情的には仕方ないとは思いますが、怒ったら犬を怖がらせるだけで犬に正しい行動を教えることが難しくなってしまいます。
ちゃんと正しい行動を教えるためには、気持ちのままに怒ってしまうことは避けてもらいたいところです。
犬に正しい行動を教えるために叱る時は、短い言葉ではっきりと叱るようにしてください。
短い言葉で飼い主としての「不快」を表現することは、犬に「してはいけないこと」を伝えやすい方法です。
例で言うと、「ダメ」とか「ノー」が多いですが、「いけない」という言葉も禁止用語として犬に伝わりやすいといわれています。
そしてわかりやすい叱り方と同様に、叱る時に気を付けてほしいことがいくつかあります。
一つ目は、叱らなくてもよい環境を整えるということです。
犬ってとても賢いと思いますが、先ほどご紹介したように時間がたった前の出来事を結びつけることはできないと考えられています。
飼い主さんが不在中にゴミ箱をひっくり返していても、帰宅してからごみ箱をひっくり返したことは叱ることができません。
不在中にゴミ箱で遊ぶことが困る時は、そのゴミ箱を犬の届かないところに片付けてしまいましょう。
いたずらをされて怒るよりも、いたずらできないような環境にすることも犬の飼育環境を整えるということです。
そして、先ほどご紹介したように遊ぶ時間をしっかりとってあげることと、お留守番の時間を短くするなども飼育環境を整えることになります。
訓練をしたからお留守番は平気という場合もありますし、個体の性格上お留守番が苦にならないという犬もいますが、基本的に犬は一人でいることが苦手です。
お留守番中は落ち着かないでいることが多いので、無駄ないたずらをする危険が高いです。
できるだけお留守番の時間は短くしてあげられるようにできれば理想的だと考えてください。
二つ目は名前を呼んで叱らないということです。
これは名前にネガティブなイメージを付けてしまうことを避けるために必要なことです。
名前にネガティブなイメージを付けてしまうと、愛犬の名前を呼んでも近寄ってこなくなるとか、名前を呼ばれることを嫌うようになることがあります。
叱った後に、やめたら褒めることがセットなわけですが、褒める時は名前を呼んでもらって大丈夫です。
名前を呼んで叱らない理由としてもう一つ、逆に叱っていることが伝わらない可能性も考えられます。
どういうことかというと、もともとポジティブな考え方をする犬などは、散歩やえさを食べる時など嬉しいことが起こるタイミングと自分の名前を結び付けている場合があります。
こうなるとこちらが叱っていても伝わらないという可能性が出てきてしまうんですね。
最後の三つ目ですが、叱り方は家族で統一させるというのも大事な気を付けてほしいポイントです。
- どんな場合に叱るのか?
- 何をしたら叱るのか?
といった「叱らなければいけないトリガー」を家族で決め、それ以外は叱らないことを徹底してもらう。
もちろん自分の機嫌で犬を怒ることはしてはいけません。
さらに、叱る時の言葉も統一しておくというのも重要です。
これは家族それぞれが自分の基準で犬を叱ってしまうと、叱られるときと叱られない時ができてしまいますし、叱る人と叱らない人ができてしまう恐れがあります。
このような対応をされると、犬は正しい行動というのがはっきりせずにぼやけてしまうため非常に混乱してしまうんですね。
「まぁ家族がそれぞれの対応をしたら犬が混乱するのはわかるけど、私は一人で飼っているから大丈夫!」と思われる人も、意外と叱るタイミングを統一できていないことがありますので、一度見直してみるとよいかもしれません。
特にうまくしつけが進まないとお悩みの方や、とりあえずしつけは終わったけどしつけにてこずったなぁという方は、ちょっと冷静に見返してみると今後の犬との関係が劇的に変わることがあります。
しょんぼり顔は卒業!性格と叱り方
性格というのは飼い主さんの性格ではなく、犬の性格です。
犬は賢い動物ですので全般的に言えますが、特に賢さが顕著な犬種だったり、賢い犬だなぁと飼い主さんが感心するような犬の場合、先ほどご紹介した「無駄なストレスを与えない」ことは特に気を付けてください。
叱り方が間違えていると、賢い犬ほど強くストレスをためてしまいます。
本当は賢いので正しい行動ができる犬なのに、飼い主さんの育て方で賢くないと思われる犬に育ててしまうことは多々あります。
長々と怒ってしまうことは犬にとって完全に無駄なことであり、ストレスを与える大きな原因の一つにもなります。
分かりやすく伝えることを常に意識して犬と接してあげてください。
そして賢い犬だって暇を持て余せばイタズラだってします。
運動欲求と愛情欲求は毎日しっかりと満たせるように気を配っていきましょう!
そして犬の性格や育てた環境などいろいろな要因から犬の性格は決まっていきます。
基本的なしかり方やタイミングなどはご紹介してきたとおりですが…
- ポジティブ&ハイテンションな犬
- 怖がり&繊細な犬
この2つの性格であった場合は、さらに注意していただきたいことがあります。
ポジティブ&ハイテンションな犬の場合、興奮しやすいため飼い主さんの言葉が届きにくいという面があります。
この性格の犬には叱っている時も褒めている時も高い音域はなるべく使わず、いつも低めの声で落ち着いた様子で接することが必要です。
高い音域は喜んでいるときにも発せられる音域なので、感情が高ぶってしまいやすいです。
犬は興奮してしまうと叱られていることも褒められていることもよくわからなくなって、興奮が鎮まるまでに時間がかかってしまいます。
「うちの犬は興奮しやすいなぁ」と思われる場合は、落ち着かせるコマンドである「おすわり」や「フセ」をしっかり訓練していつでもできるようにしておくのが望ましいです。
怖がり&繊細な犬の場合は、「叱らない」という選択肢も考えていただきたいところです。
叱るということが重要なのではなくて、伝えるということが重要ですから、「褒めることで正しい行動を理解させる」ようにしてもらったほうが有効です。
叱って怖がらせてしまうと、感情が怖い気持ちでいっぱいになってしまうので、飼い主さんの言葉が犬に届きにくくなってしまうんですね。
引いては飼い主さんのことも怖がってしまい、信頼関係を築くどころではなくなってしまいますから、叱ることを控えるのと同時に怖い顔や不機嫌な顔も見せないようにしてもらいたいと思います。
犬がしょんぼりしているしている時の気持ちや、しょんぼりさせないための飼い主さんの行動などをご紹介してきました。
愛犬を擬人化して考えてしまうのは人間の常ではありますが、人間目線で想像して犬の気持ちとかけ離れた判断をしてしまうことは危険なことでもあります。
しょんぼりした顔をしているのは、見た目通り「何らかの原因」で犬にとって望ましくない状態にいるので、その状態を改善して落ち着いた生活を送れる環境を整えてあげてください。